ものすごいニュースが飛び込んできました。日本最西端の離島「与那国島」で初めてのリゾートホテル「アイランドリゾート与那国」が2008年にオープン。今まで団体客を受け入れることができる宿泊施設がなかった島だけに、このリゾートホテルの開業には島への経済効果などが期待されていました。といっても名前はリゾートだけど実際はビジネスホテルにちょっとプラスアルファがついた程度のレベル。でも離島のホテルとしてはこの程度で十分だと思い、私自身も肯定的に受け止めていました。
しかし今朝のニュース。驚きました。
「転用未許可農地へのホテル建設に8億5000万円のずさんな融資」
もちろんホテルとは「アイランドリゾート与那国」のこと。ニュースのメインは沖縄振興開発金融公庫によるずさんな融資なのかもしれませんが、個人的にはむしろ「転用未許可農地でのホテル建設」の方だが大問題。もちろん、このずさんな融資というのもこの「転用未許可農地」への建設に対するものなので内容としては同じかもしれませんが、融資以前にこの転用を許可されていない農地への建設というのは絶対にやってはいけない話。
そもそも農地というものは転用の許可ないし農地以外への用途変更をしない限りは、農業などに直接関わる施設以外は建設できないはず。つまりのところ本来建設できない場所に勝手にホテルを造ったと言うこと。
あり得ません。
しかも現在、与那国島の農業委員会が2009年8月には既にこの転用許可されていない土地利用のことを指摘しており、アイランドリゾートに対して取り壊しを求めているらしいです。常識的に言えばこの取り壊し請求は正当なものなので、すぐにでも取り壊されるべき建築物。
そして今回の問題となった沖縄振興開発金融公庫のずさんな融資は、このホテルの敷地の一部(実際は半分)は農地と認識しながら8億5千万円も融資したということ。しかも転用を許可する自治体に事後転用が可能か否かも確認せずに勝手に公庫ができると判断して融資。
あり得ません!
加えてこのホテルには沖縄では有名な政治家で、現在は普天間基地問題でメディアにもよく露出していてる連立政権の沖縄選挙区の代議士の「兄」が関わっているらしいです。その代議士の具体的な名前は差し控えさせて頂きますが、那覇など沖縄1区では有名な人です。
この代議士の兄が社長を務める会社が今回問題になっている与那国島の土地(農地)を1983年に取得したものの地権者親族から所有権を移すことができず、そのまま農地からの転用届けを沖縄県に提出。沖縄県に許可されなかったにもかかわらず、その土地を農地以外のアスファルト工場として20年も使っていたらしい。2008年以前に与那国島に行かれたことがある方なら、あのホテルの土地にもともと工場があったのはご存じですよね。あの工場そのものが違法に農地を工場として使っていたらしいです。
あり得ません!!!
しかも今回のホテル建設に際して、この土地をホテル経営する会社に賃貸し、公庫に融資を申請する際も「土地の所有権や農地からの転用などの問題は解決する」と言い、農地転用を許可する自治体に確認もしなかったらしい。
あり得ません!!!!!
確かに民法上は20年以上に不動産を占有すると所有権が移るという内容はありますが事情が事情。那覇地裁ではこの土地(農地)の所有権は20年占有しても、そもそも農地だった部分は工場を作れない場所であるということから農地部分については所有権の移転を認めないとの判決。現在控訴中ですが、20年以上違法行為を続けていた農地部分に関しては所有権が移転されることは無いと思います。
結果、ホテルの存続はこの農地所有者および自治体次第ですがかなり厳しいと思います。
今回のこの件に関して、代議士の名前が出てきましたが直接的な関与は無さそうですがイメージは悪いですよね。与那国島は沖縄4区なのでこの代議士の選挙区である1区とは違いますが同じ沖縄。裏で政治的な力が及んでいないとは言い切れません。
そもそも農地を取得してそれを将来的に転用可能と勝手に判断して20年以上も違法に使い続け、その後転用できると勝手に言ってホテル運営会社へ土地を賃貸するという、この代議士の兄の会社の勝手な判断が問題。確かにホテル運営会社もその言葉を鵜呑みにしたのも問題かと思いますが、おそらく代議士というバックの存在も影響があったのかもしれません。
しかも農地所有者(地権者)と占有者(代議士兄の会社)とで裁判になっている以上、農地の所有権を占有者に移譲する可能性は低いと思いますし、農地からの転用許可もこれまでの経緯からすると自治体もすんなりできないと思います。
結果、ホテルの存続はかなり厳しいかもしれません。
とりあえず裁判中は営業できるかもしれませんが、将来性はかなり厳しいと思います。この農地の用途外利用は厳密に言うと全国でもやってしまっているものもあるかもしれませんが、ここまで大規模な施設においては聞いたことはあまりありません。加えて今回のこの事実を知りつつ融資した公庫の存在。この2つが一緒になったが故にこれほどのニュースになってしまったのでしょう。
まとめますと今回の問題点はこの2点かと思います。
1.農地から他の用途へ転用許可が下りないまま農地以外に使用したこと。
2.農地のままの土地であることを認識しつつ公庫が融資したこと。
1つ目のことは認識の甘さ以前の問題で絶対にやってはいけないこと。常識を逸しています。2つ目はお金を扱う公庫が裏も取らずに勝手に判断して融資したことが問題。乱脈融資および認識の甘さが露呈したと思われます。
そして先も綴りましたがホテル側もそんなリスクを抱えている土地に施設を造ろうと思うこと自体も問題だと思います。しかしホテル運営側は民間企業なので公庫のような甘い認識はそんなにないと思うのですが、このような結果になったと言うことはどうしてもその代議士の存在が気にかかる次第です。
とかく「建設」という言葉の裏に政治家の陰有り。
建築家として建設業界に長く携わってきた経験からも、公共事業になると政治家の名前がすぐに出てきます。公共事業でなくても今回のように親族や近親者が関わる「建設」の場合も名前がよく出てきます。
まぁその話は今ここで綴っても仕方ないのですが、問題は今後の与那国島。与那国空港とメインの集落でもある「祖内」の間にある「アイランドリゾート与那国」の今後はどうなるのでしょう?
ウルトラCでも無い限りは存続は厳しい気がします。強いて言えば現在行われている裁判で所有者と占有者がホテルが存続できる「和解」になればいいのですが、そこには転用を許可する自治体も絡んでくるので和解しても簡単に存続とはいかない気がします。これを許したら何でもOKになっちゃいますからね。
そもそも農地を勝手に工場に使い、その後ホテル用地として賃貸した代議士兄の会社が原因。
ホテルを存続させてあげたいという気持ちも多少ありますが、まずはこの会社の事実関係次第だと思いますが、この報道からみてもホテルの存続はかなり厳しいと言わざるを得ません。
「アイランドリゾート与那国」
この先どうなるか心配です。ホテルだけじゃなく島や島の人への影響も・・・
<この問題のニュース>
<アイランドリゾート与那国の詳細情報>
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